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神戸地方裁判所 平成7年(ミ)1号 決定

主文

申立人ら(但し申立人久後幸男を除く)の本件申立てを棄却する。

申立人久後幸男の本件申立てを却下する。

理由

一  申立人らは、「被申立人大景生コン株式会社について更新手続きを開始する。」との裁判を求めた。

申立人らの申立ての理由は別紙のとおりである。

二  記録によれば、久後幸男を除く申立人七名は、被申立人の従業員であった者であり、その債権額は、被申立人の主張によっても、その合計額が金四三一万五三四二円に達することが認められ、右は、被申立人会社の資本金二〇〇〇万円の一〇分の一を超える債権額であり、右申立人七名については、本件会社更生の申立てをなし得るものということができる。

しかし、申立人久後幸男については、同申立人が被申立人会社の従業員ではなく、被申立人会社に何らの債権を有していない(同申立人は被申立人に対し、金八八二万五二四八円の債権を有すると主張するが、これを疎明する資料はない。)のであるから、被申立人会社について会社更生手続き開始の申立てをすることができず、申立人としての適格を欠くものである。したがって、同人の申立てはこれを却下すべきである。

三  次に、一件記録により被申立人会社の更生の見込みについて検討する。

1  被申立人会社は、昭和四三年一一月一日設立にかかる生コン製造販売等を目的とする資本金二〇〇〇万円の会社であって、中村建設株式会社(代表者中村吉輝)の関連企業一〇社の一つである。右中村建設株式会社は、明治二八年に中村熊吉(中村吉輝の祖父)創業の土木建築業を基盤として、昭和一九年七月に設立された株式会社中村組から発展した会社であって、平成五年八月三一日手形不渡りを出して倒産したが、被申立人会社も中村建設とその関連会社二社(大王工業株式会社、株式会社ワールドナック)とともに、右同日、手形不渡りを出した。右手形の不渡りは、株式会社ワールド産商(中村建設株式会社のグループ会社の一つ)がゴルフ場建設の資金繰りに窮したことと関連するものである。

被申立人会社は、負債総額が約二五億五八三五万五〇〇〇円であり、一方資産としては、小野工場敷地(評価額約四億三〇〇〇万円、三木工場敷地(評価額約四億八〇〇〇万円)、建物(評価額約二七六三万九〇〇〇円)、構築物(評価額約九八七二万四〇〇〇円)、機械・車両・備品等(評価額約五六五五万九〇〇〇円)、出資金(二億〇八三〇万八〇〇〇円)、流動資産(一三億〇三一八万四〇〇〇円))があるものの、土地建物にはそれぞれ一〇億円を超す抵当権、根抵当権が設定され、出資金は相殺されることになるものであり、回収可能の流動資産はない。

2  被申立人会社の業務の再開のためには、相当額の運転資金を必要とするこというまでもないところ、申立人らは、上部労働組合、労働金庫からの多額の借入れと資金援助が見込まれるというが、裏付けのある主張とは認めがたいし、資金の調達について従来の取引銀行である兵庫銀行の協力を得ることは不可能というべく、新規の取引を行うとしても担保として提供すべき会社の物件は存せず、運転資金の調達は甚だしく困難とみるべきである。

3  商品の仕入れ先については、従来の仕入れ先の三菱マテリアルや新日本製鉄関連の会社の協力を望めないし、申立人らが独自の仕入れのルートを有しているものでもない。

4  商品の販売先についても、従来の販売のルートである日商岩井や三菱商事などの商社を通じて販売できる見込みはないし、長期にわたる安定した生コンの販売先も見込みがたい。

5  また関係人の協力についてみても、申立人大前、同浅井、同宮本、同内橋、同長谷川が従業員であったときの職務である運転手としての協力、申立人永井が従業員であったときの三田工場の試験係としての協力、申立人依兼がプラント操作員としての協力や意欲を期待できるとしても、被申立人会社の営業を支えていた他の従業員は既に他の会社でのポストについているのであるからその協力を期待することはできないし、会社債権者等その他の関係人の協力を期待しうる資料はない。

6  以上のとおりであって、被申立人会社は、更生の見込みがないものと認めざるを得ない。

四  よって、会社更生法三八条五号により、申立人ら(申立人久後幸男を除く)の本件申立てを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 亀岡幹雄)

別紙

申立の理由

第一 更生手続開始の原因たる事実

一 申立人らは、被申立人会社従業員であるところ、被申立人会社代表取締役中村吉輝個人の乱脈経営と無責任逃亡により、平成六年一一月末現在で、被申立人会社に対し、別添「申立人及び債権額一覧表」記載の通り、未払給与総額金五一九二万四九五八円、未払冬季夏期手当総額金一一四〇万円、合計六三三二万四九六八円(これに退職金総額金一三七〇万七三八五円を加えると金七七〇三万二三五三円となる)の労働債権を持つ債権者であり、右債権額は被申立人会社の資本金二〇〇〇万円の十分の一を越える債権額である。

尚、申立人ら(但し久後幸男のみは後記の別の労働組合員)は、日本労働組合総連合会・交通労連・関西地方総支部に属する労働組合員で、生コンクリート関係の労働者で組織する「連合・生コン産業労働組合」(委員長・坪田健一、組合員八〇〇名)に所属し、被申立人会社に、同労働組合大景生コン支部(支部長大前一繁、組合員七名)を置く労働組合法に基づく労働組合の組合員であり、申立人久後幸男は、総評全日本建設運輸連帯労働組合関西生コン支部(委員長・武建一、組合員二三〇〇名)に所属する労働組合法に基づく労働組合の組合員である。

二 被申立人会社は、昭和四三年七月創業、同年一一月一日設立、資本金二〇〇〇万円の株式会社で、その本店(本社)を肩書地に置き、工場を

イ 兵庫県加東郡社町西古瀬字ヒラキ一二六九番地の二

小野工場(工場長・川上邦男・従業員約十数名)

ロ 兵庫県三木市福井字鶯谷二二五七番地

三木工場(工場長・常峰正勝・従業員約八名)

ハ 兵庫県三田市大川瀬字大滝一五一〇番地の一

三田工場(工場長・松原寿秋・従業員約七名)

に設置し、その営業目的を

1、生コン製造販売。

2、コンクリート二次製品の製造及び販売。

3、アスファルトの製造及び販売。

4、前号に付帯する一切の業務。

とする、年商を約一八〇億円程度と呼称する、営利法人たる株式会社である。

三 また被申立人会社は、その代表取締役中村吉輝が経営する「中村グループ」に属する株式会社の由で、この「中村グループ」は、中村吉輝が独裁的に支配していて、後記の中村建設株式会社を中核会社として、合計一〇社で構成されている由である。それらは

1 小野市上本町二一五番地の一

中村建設株式会社(昭和三一年三月設立、総合建設業等、代表取締役・中村吉輝、資本金八〇〇〇万円)

2 小野市上本町二一五番地の一

大王工業株式会社(昭和三八年五月設立、重軽量鉄骨工事、代表取締役・原田智、資本金一〇〇〇万円)

3 兵庫県美嚢郡吉川町前田三二番地の七

(小野出張所 小野市上本町二一五番地の一)

大貴工業株式会社(昭和三九年五月設立、総合建設業、代表取締役・中村吉輝、資本金一二〇〇万円)

4 小野市上本町二一五番地の一

道谷慣行株式会社(昭和四三年三月設立、スキー場等経営、代表取締役・中村吉輝、資本金二〇〇〇万円)

5 小野市上本町二一五番一号

大景生コン株式会社(昭和四三年三月設立、生コン製造販売、代表取締役・中村吉輝、資本金二〇〇〇万円)

6 小野市上本町二一五番地の一

株式会社中村光産(昭和四四年六月設立、ゴルフ場等経営、代表取締役・中村吉輝、資本金一八五〇万円)

7 小野市上本町二一五番地の一

ナカムラ殖産株式会社(昭和四八年五月設立、宅地建物取引業等、代表取締役・中村俊介、資本金二〇〇〇万円)

8 小野市上本町二一五番地の一

ワールド産商株式会社(昭和四九年五月設立、土地造成開発等、代表取締役・中村吉輝、資本金三〇〇〇万円)

9 小野市上本町二一五番地の一

株式会社ワールドインベストメンツ(平成元年八月設立、不動産コンサルティング等、代表取締役・中村俊介、資本金二〇〇〇万円)

10 小野市上本町二一五番地の一

株式会社ワールドナック(平成五年三月設立、土木建築工事資材の販売等、代表取締役・藤澤孝弘、資本金三〇〇〇万円)

の一〇社とされている。

これらは、すべて本店(一社のみ出張所)を「小野市上本町二一五番地の一」に置き、同所で各社の経理等も集中管理している模様で、その詳細は掴めず、事実上は中村吉輝個人の独裁的経営に係る一つの企業集団と理解・認識されていたものである。

四 被申立人会社の営業休止とその後の放置

ところが、平成五年九月一四日に至り、右中核会社である「中村建設株式会社」が、負債総額約一〇〇億円と称して倒産し、「中村建設株式会社」が神戸地方裁判所に和議申請し、「中村グループ」全体の負債総額は約二五〇億円と新聞報道(疎第三号証)されるに至った。

このため、被申立人会社は第一回目の不渡りを出した由で、右同日から事実上営業が停止され、会社も諸設備等も正常に存続するにも拘らず、その他の会社役員らも為す術を知らず、会社事業は開店休業のような状態のまま放置され、申立人ら従業員は出勤するも給与・手当等が支給されず、解雇もされず、勿論退職金の支給もなく、申立人ら労働者達はいわば日干しのような有様で、そのまま放置されるに至った。

右は、被申立人会社としては、不渡りは一度出したが、現実の状況は、代表取締役一人が逃げて所在不明となったのみで、現実の会社の事業の継続には、何ら著しい支障はない状況であるにも拘らず、経営陣の無能で、弁済期にある債務を弁済することが出来ず(経理を「小野市上本町二一五番地の一」の「中村グループ」に集中管理されていた事情からとも考えられるが)、従って右状況は、被申立人会社に破産の原因たる事実の生ずる虞がある場合にも該当すると考える。

また右事実は、被申立人会社経営陣の、申立人らに対する明らかな労働基準法違反事実であるが、これを救済すべき立場の人達は、その後も何らの救済措置も取らなかった。

五 代表取締役中村吉輝の逃亡と、その後の会社側の無策。

その後、被申立人会社の代表取締役社長たる中村吉輝は、無責任にも所在不明となって姿をくらましたまま、被申立人会社やその従業員らに対する何らの善後措置・救済措置もとられず、一年余を経た現在に至るも、中村吉輝は尚その所在が掴めず、その間、被申立人会社のその他の会社役員は、引き続きの会社経営について、何らの善後策を講じる能力が無く、他方、被申立人会社代理人で、中村吉輝からも倒産整理の全権を委任されたと称する、神戸弁護士会・姫路支部所属・水田博敏弁護士が、被申立人会社の倒産整理業務を担当されたが、同弁護士も、当初に債権者集会を一度開いたのみで、債権者らから営業再開等を強く求められたにも拘らず、その後、何らの善後策も講ぜず、殊にその間、本件申立人らや、その所属する労働組合からの書面で要求する、そもそも「任意整理の手段を執るのか」或いは、破産の申立、会社更生手続開始決定の申立、和議の申請等の「法的処理手続きを執るのか」との質問や要求にも全く応じず、ただ申立人らの所属する労働組合に対しては「賃金その他の労働債権は、必ず他の債権者に優先して弁済処理をするから」と口頭確約するのみで、遂に今日に至るも、何らの措置も手続きの進展もなく、いたずらに月日を経過するのみであった。

かくして、最後には、平成六年一一月二九日の前記労働組合と右被申立人会社代理人の水田博敏弁護士との折衝では、同弁護士は当初からの同弁護士への委任状を開示することなく、同弁護士は被申立人会社の代理人や、中村吉輝の代理人の各業務から辞任した旨の最終発言を得るに至った。

六 本件申立人らの自主生産再開に関する協定

申立人らは、前記被申立人会社の営業停止を踏まえ、おそらく「中村グループ」全体を見れば債務超過の状況であろうことは推測し得るが、被申立人会社のみに着目すれば、従前の営業自体は極めて順調で、確実に黒字経営だと自他共に認められて来た会社であり、その優れた各種設備・生産能力等からすれば、このまま潰すには、誠に惜しい会社なのである。

もし社長の中村吉輝個人が、今般明かになったような、被申立人会社の営業目的を外れた他社の取引について、違法な債務保証や権限外の違法な手形の乱発等さえ為さなければ、本来は被申立人会社には、破産に至るような営業実態や、経理の赤字が生じる状況は、到底考えられない。

よって、申立人らとしては、申立人らの属する前記労働組合の支援を受け、当初から、被申立人会社の留守を預かる形で出社していた被申立人会社常務取締役の石井武(社長中村吉輝逃亡後の会社業務を処理していた)と折衝して、「労使協定書」を締結し、同人らに会社業務の速やかな再開の約束を取り付ける一方、前記水田博敏弁護士(被申立人会社代理人で、中村吉輝個人からも全権を受任していると称していた)とも再三にわたり折衝し、もし石井取締役や水田博敏弁護士らにおいて、会社営業再開の措置をしない場合には、申立人らにおいて被申立人会社の生産設備の保守・維持をする(このまま放置すれば、現存の高価な生産設備等が無一文の廃材となるので)とともに、前記労働組合と被申立人会社との間で「労働組合の自主生産に関する協定書」を作成して、自主管理することを申し入れ、その場合には、申立人らが(所属の上部労働組合の支援を受けて)自主的に被申立人会社の業務の維持管理と再開をして貰っても結構である、旨の口頭約束を取り付けた上、その営業再開を待っていたものである。そして申立人らや前記労働組合では、右自主再開の場合も考慮に入れて、その準備体制も整え、会社側の早急な善後策の展開を待って来たが、今日に至るも遂に任意整理も法的整理手続きも為されず、本件申立人らの債権者に対する支払い乃至救済措置も、何ら執られないままに終わった。

加えて、右水田博敏弁護士は、平成六年一〇月一六日に至り、前記代理人からの辞任を表明し、その際、申立人らの労働組合から、同弁護士に対し、前記の「労働組合の自主生産に関する協定書」への会社代理人としての署名・押印を求められた際、当該協定書に押印する筈だった被申立人会社の代表者印等を、中村吉輝個人の強い要求に屈して既に同人に返還して同弁護士の手元には無い上、既に代理人資格や整理事務委任関係も消滅したので、今更に前記協定書に代理人としての署名も押印も出来ない、として、申立人らの求める右「自主生産に関する協定書」への署名押印行為を、拒絶されるに至った。

しかし、申立人らは、つとに自らの生活権を守るため、また、被申立人会社がいたずらに遊休させている優秀な生産設備を維持・保全する(それは社会的要請でもある)ためにも、この際、自主的に業務再開を決意しているものであり、こうした事態に備えて、予め独自に一部の被申立人会社役員や営業のノウハウを担当出来る多数の人達との協力体制を組んで、いつ何時でも自主的に業務再開が出来るだけの準備が出来上がっている。

他方、申立人らは、かかる準備体制を理解して支援してくれる上部労働組合や労働金庫からも、既に相当多額の資金借入れをしており、また右上部労働組合では既に申立人らの自主操業の支援について、組合の機関決定を経て資金支出も決定しており、右関係者らと共に営業再開・黒字営業の確実性を再三討議の上、その可能性を確信している次第である。

右のように、営業再開が一刻も急がれる状況を黙殺して、倒産事件屋への利権売却(その裏で何がしかの関係者の不当な利益獲得を目指した)のみに専念して、申立人らを窮地に陥れる中村吉輝側の人達の約束違反・態度豹変は、極めて無責任な態度であったと非難せざるを得ない。

七 会社資産を巡る暴力団関係者の違法な動向。

いずれにしても、申立人らには、被申立人会社の営業停止の理由は何一つ説明も釈明されず(ただ社長中村吉輝のゴルフ場造成計画への会社資金持出しが原因と聞くのみで)、被申立人会社の経理・債務に関する正しい資料も何一つ公開されず、検討すべき詳細資料を入手する手段さえ無く、噂によれば、逃亡中の社長中村吉輝は暴力団関係者の庇護下にあって、密かに倒産事件屋等と通謀して、申立人らの野垂れ死にを待って、何がしかの現金取得と引き替えに、被申立人会社そのものを暴力団の支配下に譲り渡そうとしている危険性が、具体的な人物(中路某など)も介在して、顕著に認められる実情にある。

八 従業員救済の緊急性

とにかく、申立人らは、その生活基盤たる仕事を阻まれ、給与も諸手当も一切が未払いのままに放置され、この一年余りの間、今日営業が再開されるか、明日営業が再開されるか、と期待と不安の中に苦悩して来て、その間、前記上部労働組合の斡旋による労働金庫からの生活資金借入れも日毎に増大し、今は何としても本件労働債権の弁済を受けなければ、上部労働組合ともども、共倒れになる危機状況に陥っており、もう抜き差しのならない苦悩のどん底状態にある。

九 被申立人会社の第一回の不渡り発生の原因について

右原因は、一に中村吉輝個人の違法行為・商法上の特別背任行為によるものと思料されるが、その刑事告訴等の問題は、証拠資料を整えた上での将来の会社更生管財人の判断に委ねる予定である。

被申立人会社は、その本来の業務である生コン等製造販売の業務に関しては、従前から明かに黒字経営で(疎第十四号証の一乃至三の各決算報告書参照。尚、本件会社更生手続きの中で、更に正規の、正確なものを得たい)、誰の目から見ても、永年安定して順調に黒字経営が為されて来たにも拘らず、社長の中村吉輝個人が虚栄のゴルフ場経営に凝り、他社への違法な融資・仮払いと、会社不動産への法外な債務負担(これには事情を知りつつ、法外な融資を実行した金融機関担当者の背任責任も考えられる)、更に違法な手形裏書や手形の名義貸し等を繰り返した結果、正規の営業についてまで資金繰りに支障を来たし、突如不渡りを出すに至ったもの、と考えられ、この中村吉輝の違法行為の責任は、言語を絶する無茶苦茶なものと言わなければならない。

右は、疎第十五号証の、神戸地方裁判所第三民事部宛てに平成五年一二月一六日付で提出された、同地方裁判所・平成五年(フ)第四二〇号・破産事件(破産者・株式会社ワールドナック)の破産管財人・矢野弦次郎弁護士作成にかかる「報告書」に記載されている通りで、特にその「報告書」の第二の「破産宣告に至った事情」の2に記載されている通り、「一連の経営破綻の原因は、専ら中村吉輝個人の、違法な他会社との経理の混流にあり」、これを本件被申立人会社について考えれば、会社資金の違法な他会社への持ち出し行為に、その全責任があると認められる。

十 被申立人会社の事業再建の確実性

しかし、被申立人会社の事業は、その本来の目的である生コン営業のみに専念すれば、間違いなく黒字経営が続けられる実情で、この黒字経営を続けることが可能であれば、仮に現時点で計算上相当な債務超過が存在するとしても、その或る程度の弁済履行は可能であり、本来的にその他の一般債権者らも、この際、一挙に被申立人会社を破産させても一円も弁済を受け得る可能性がなく、それよりは、たとえ長い年月は要しても、被申立人会社が更生し利益を出して、債権者らに対し、いくらかづつでも将来の弁済が見込めるものならば、この際は会社更生法の適用を期待する債権者が多く、それが亦、被申立人会社の優秀な生産設備を社会的・経済的に活用する道にも繋がるものであって、どう考えても、被申立人会社の会社更生・再建は、この際、一番妥当な方法であり、また、それが十分に可能なことは明白である。

(勿論、別途、中村吉輝個人の違法な会社資金持ち出しによる、不当な債務負担等については、今後の会社更生手続きの中での、否認の対応もあるべく、他方、現存の会社財産に被せられた多額の保証債務も、それらはいずれも他の会社の物件との共同担保であるため、他の会社の整理の進展、他の担保物件処分による弁済・債務減少等も考えられるもので、こうした背景も考慮すれば、将来の本件会社更生手続中では、現有の被申立人会社の債務総額は、相当程度に減少されるであろう事情も、十分に推認することが出来る)

十一 今回の阪神大震災による特別事情について

平成七年一月一七日午前五時四六分、今回の阪神大震災が発生した。

右の結果、震災被災地の早急な復興が求められるなか、住宅等建設の起訴資材である生コン・セメントに対する需要は、飛躍的に莫大な量が見込まれる一方、これを供給する生コン工場は、被災地周辺での九工場のうち、実働可能なものは僅か二工場で、春までには更に三工場も稼働し得る見込みと伝えられるが、残る四工場は壊滅状態という話である。

他方、原材料の搬入経路も、港湾施設の復旧が遅れ、全面回復には二年から三年は必要と伝えられるなか、差し当たりの陸揚げは播州方面の港湾からの搬入経路が考えられており、被災地に隣接する東播の本件被申立人会社の優秀な生産設備の稼働への要請は、今や社会的要請であり、早急な震災復興のためには、その稼働が焦眉の急を要する状況が発生している。

またセメント・生コンの生産・販売は、厳格な日本工業規格の制約があり、製品に対する所轄官署の認可を得なければ、これを生産・販売することは不可能で、更に地元同業組合への加入等の問題もあり、いくら震災復興のためと言っても、新規の工場設置は極めて難しい背景があるもので、これらの点について、既に、申立人らの所属労働組合である前記労働組合らの奔走で、製品規格の認可や原材料供給の手配等も出来ており、本件会社更生による生産稼働は、いつにでも再開出来る態勢にあり、この意味でも本件工場をこのまま遊休設備にして放置・廃墟化することは、社会背景からも許されないことと思料する。

これに関し、現在遊休している本件工場のうち、小野・三木各工場の設備は、各生コンの日産生産能力は、各一二〇〇立方メートルの生産能力があり、前記社会的背景から考えれば、この半年後頃からは、或いはフル稼働の事態さえ見込まれる一方、本件会社更生の問題点である経営的見通しとしては、倒産前の各工場の規模では、月間約六〇〇〇立方メートル(日産平均約二〇〇立方メートル)の出荷さえあれば、諸経費を支払っての採算で、十分に黒字が出せたという説明を聞いているので、右の震災後の状況からは、差し当たり日産平均約二〇〇立方メートル以上の出荷を確保することについては、まず不安のない状況に立ち至ったと思料する。

本件申立にあたり、大きな問題点として、まず経常経費の確保の面と、出荷の量の確保が出来るかの面とが、種々検討されたが、差し当たり更生会社の人件費は従前の約半分程度で賄えると考えられる上、売り上げ量の確保については、少なくとも月間約六〇〇〇立方メートル以上の出荷が可能であれば、更生会社の十分な黒字が見込めると考えられるもので、今回の不慮の災難による需給条件の変化により、本件会社更生には更に有利な状況が見込まれることとなった事実は、間違いない。

更に生コンの搬送可能距離は、工場から九〇分以内ということであり、これで見ると、小野工場からは神戸市西区までが、三木工場からは神戸市中心部までが、その搬送可能範囲に入り、本件会社更生が今回の震災復興に寄与し得る可能性は極めて大きく、この点でも本件工場をいたずらに腐らせることは誠に勿体ない浪費で、この非常事態の時期に最大限に設備を生かしたいという申立人らの気持ちは、是非とも裁判所にもお汲み取り戴きたいと願うものである。

以上の状況からも本件会社更生開始の手続きの進展は、時宜に合った社会的に緊急の必要性のあるものと確信する。

十二 最近三年間の被申立人会社の貸借対照表

右は、被申立人会社側の説明では、疎第十四号証の一乃至三の各決算報告書の、各貸借対照表の記載の数字の通りである。

但し、右各決算報告書写し三通は、申立人らが苦心して密かに入手したもので、具体的には、その記載数字は真実としてそのまま信用することは出来ない危険な一面(中村グループの他社、特に破産したワールドナック株式会社のゴルフ場造成につき、被申立人会社資産の物上担保への提供、他社の手形への裏書き保証等は、表に現れていない危険が考えられる)があるが、被申立人会社の固有の営業では、むしろこれ以上の黒字も考えられるもので、これらは更に会社更生管財人の具体的な資料による会社経理の精査が必要と思料する。

尚、これらの資料は、本来被申立人会社に備え付けて存在すべきもので、早期に各債権者に提示・説明されるべきものであるにも拘らず、一切が暗黙の中に隠され、申立人らとしても、前記水田弁護士らにも再三にわたり資料公開方とその写しの交付を求めて来たが、全てが逃亡した中村吉輝社長の手元にあるとして、遂に公開されなかったもので、これらの正確な資料は、今後の会社更生手続きによる収集と精査をまたなければ、現段階では、申立人側において、これ以上の資料の入手は不可能である。

第二 被申立人会社の目的及び業務

一 会社の目的

生コン・コンクリート二次製品・アスファルトの各製造・販売のである(疎第一号証の被申立人会社登記簿謄本に記載の通り)。

この点は特に重要で、前述の中村吉輝個人のゴルフ場造成企画への債務負担行為は、明かに会社の目的外の、違法な債務負担行為なのである。

二 経歴及び業界における地位

被申立人会社は、昭和四三年の創立以来、生コン専業で、その製品の原料を旧三菱セメント・現三菱マテリアルから供給を受け、東播磨地区では三工場を維持して、優良な生コン販売を続けて来たもので、現在に至るも確実な原料供給先と確固たる顧客基盤を有しており、更に各種労働団体からの支援を受けて、その業務再開はいつでも可能な状況にある。

(むしろ緊急避難的に、労働組合の自主再開を急ぐ動きもあり、こうした生存権を主張する労働運動の背景についても御賢察を賜りたい)

三 被申立人会社の主たる株主

これも株主名簿が公開されず、確かな株主構成は明確ではないが、市販のデーターバンク等の資料によると、その二七%が既に和議手続きにあると聞く中村建設株式会社で、その他の七三%は中村吉輝個人とその同族の名義と推測されるもので、現状では、その換価々値・流通価値は皆無と思料するが、株式について社会的・法的に一番の不安要因は、これらの株券乃至株式が現に中村吉輝個人の手元にあり、同人がこれを悪用してこれらをしかるべき倒産整理屋ないし暴力団関係者らに仮装譲渡し、これを口実に違法集団が被申立人会社を喰い物にする危険性であり、現に暴力団関係者らによる被申立人会社一括譲渡(従業員らに対する債務を踏み倒して)の噂が広まっており、中村吉輝と共謀した違法人脈の暗躍が絶えない。

四 会社の役員

代表取締役・中村吉輝・取締役・石井武、取締役井上賢一、取締役・臼井治良、取締役・松原寿秋、監査役・中村愛子(中村吉輝の妻)。

右のうち、従業員役員である常務取締役・石井武、取締役工場長・松原寿秋らには、申立人らの自主生産につき、全面的協力と参加の了解を得ている。

五 申立時における会社従業員

申立人ら連合系労働組合員七名、連帯系労働組合員一名、協力役員二名、のほかに、各系列労働組合員やその協力者数名の支援を得て、取り敢えず被申立人会社小野工場において、事業再開の準備が進められている。

第三 会社資本、資産等

一 会社の発行済み株式の総数等

会社の発行済み株式(額面五〇〇円)の総数、四〇〇〇株。

二 会社の資産・負債及び損益

これに関する被申立人会社の説明は、疎第四号証の平成五年八月三一日現在の「貸借対照表」「損益計算書」の通りであり、

その説明資料として

イ 会社資産としては、会社側の説明では、疎第七号証の「債務者リスト」、疎第八号証の二の「資産の部」記載の各資産、疎第八号証の三、四の「受取手形一覧表(表示が無いが前後の綴りから、それらしい)」、疎第八号証の六の「定期預金一覧表」、疎第八号証の七の「不動産一覧表」の通りのようであるが、右資料の信頼性は疑わしい。

例えば、右疎第八号証の七の「不動産一覧表」のみを見ても、明らかに疎第二七号証の不動産一〇筆分が脱落しており、極めて雑で不十分なものと言わざるを得ず(その点でも会社側関係者の無責任振りが窺われる)その後の調査では、会社所有不動産の明細は、疎第二六号証の一乃至二七の各不動産に加えて、疎第二七号証の一乃至一〇の各不動産が存在する。

また、疎第八号証の二に記載の、中村建設株式会社と株式会社のワールドナックに対する「貸付、仮払」金一二億六七四〇万二二四三円については、到底弁済を受け得る見込みはなく、資産とは言えない。

ロ 会社負債としては、会社側の説明では、疎第五、六の一乃至四号証、疎第八号証の五の各「債権者リスト」、及び疎第八号証の一の「負債の部」の各記載、疎第八号証の五の「借入金融機関一覧表」記載の金額の通りのようであるが、これらの資料も、その多くが手書き資料で信用し難く、おそらく中村吉輝側の誰かが、今回の倒産事情説明のために、急遽適当に作成したと見られる、不正確の疑いの拭い切れない資料であり、更に会社更生管財人等による正確な資料収集にまたねばならない。

三 債権者、債務者(平成五年九月一四日現在)

被申立人会社の説明によると、同社に対する債権者、債務者は、当初の只一度の債権者集会で配布された、疎第五号証、疎第六号証の一乃至四の債権者リスト、疎第七号証の債務者リスト、疎第八号証の金融機関リストに、それぞれ記載の通りのようである。

イ 更生担保債権。

更生担保債権については、疎第九号証の一、二の「保有資産明細書」に記載の金融機関名とその担保設定額が参考資料と考えられるが、これと疎第八号証の八の「(担保提供)一覧表」(その意図の一覧表らしい)とを比較対照してみると、結局、最終的には、疎第八号証の五の金融機関リストに記載の八つの金融機関となるやに理解される。

そもそも被申立人会社関係で、申立人らが当初収拾した不動産の登記簿謄本(疎第二六号証の一乃至二七)によっても、疎第八号証の七の被申立人会社の「不動産一覧表」は、その内容にも表示の正確性にも誤謬が多く、更に、その後知り得た不動産の登記簿謄本(疎第二七号証の一乃至一〇)によっても、被申立人会社の説明は脱落が多く、誠に信頼の置けない、いい加減な説明と言わざるを得ない。

しかし、これ以上の詳細資料が入手出来ないので、一応右各文書から推測するに、その総額は一応金二一億三〇三二万五七〇七円となっているが、その多くは根抵当権(従って融資枠)の金額であり、具体的な現実の債務は不明であるし、確定的な抵当権は、県信用保証協会と中小企業金融公庫の合計二億二二〇〇万円のみで、疎第八号証の八を基準にすると、担保の総額は一応二四億五七〇〇万円となるが、そのうち被申立人会社を債務者とするものは、その約半分の一二億五七〇〇万円となっている。疎第九号証の一、二にも担保設定額の記載があるが、これには明らかに重複した記載があり、その内容は、そのままには信用し難い。

ロ 優先権のある更生債権。

本件申立人ら従業員の雇用に基づく賃金債権については、事業再開さえ出来れば、会社更生への同意を得られることは確実で、むしろ事業が再開されるなら、積極的に参加しようという人達が増えつつある現状である。

ハ その他の一般の更生債権。

その他の一般の更生債権者は、疎第五号証の支払手形一覧表、疎第六号証の一乃至四の一覧表記載の計六八債権者(営業上の取引)、と疎第七号証の仕入先債権者一覧表記載の一〇債権者、と考えられるが、いずれも通常の商取引による債権者で、現状では何ら弁済を受ける見込みがなく、事業再開さえ出来れば、むしろ積極的に協力しようという債権者が多く、その同意を得られることは、ほぼ確実と考えている。

四 会社の資産については、疎第八号証の二「資産の部」に説明の通りのようであるが、前記被申立人会社取締役の石井武らの意見によると、右不動産の換価々値は、現状では右の半分以下と見られる危険性があり、そもそも、この疎第八号証の二「資産の部」の説明にある、「ワールドナック、中村建設に対する「貸付、仮払」金の金一二億六七四〇万二二四三円」は、現在では全く回収の見込みが無く、これが今回の倒産劇のポイントを示す中村吉輝の違法貸付、違法仮払の証拠の一つである。しかも、これらの貸付金、仮払金の出所は、前述の被申立人会社の各金融機関からの借入金であり、そうすると中村吉輝の特別背任行為の裏には、かかる危険な融資を実行した各金融機関の行為にも、疑問が生じる。

五 被申立人会社所有不動産

その確かなもので、現在判明しているものは、疎第二六号証の一乃至二七の不動産と、疎第二七号証の一乃至一〇の不動産の、合計三七筆の不動産であるが、被申立人会社の説明では、その評価額は疎第四号証の貸借対照表の記載、及び疎第八号証の二「資産の部」に記載の金額の通りのようである。しかし乍ら、この疎第八号証の二「資産の部」の説明は、筆数が抜け落ちている上に、価値評価も信用し難く、明らかに疑問がある。

第四 会社財産に関して、現在為されている他の手続き等

一 貴裁判所社支部宛てに、債権者・株式会社兵庫銀行より、疎第二六号証の九乃至二六の不動産、及び疎第二七号証の一乃至一〇の不動産について、同庁平成六年(ケ)第二八号不動産強制競売事件が係属していて、現在、債権届出催告期限が平成七年五月一六日と定められている。

二 その他に、同支部宛てに、債権者・株式会社幸福銀行より、同庁平成六年(ケ)第二八号不動産強制競売事件が係属し、同じく同支部宛てに、債権者・株式会社富士信用組合より、同庁平成六年(ケ)第二八号不動産強制競売事件が係属しているが、この二件はいずれも目的物が個人名義の不動産で、被申立人会社の本件工場の事業再開とは直接には関係が無いと考えられる。

三 しかし乍ら、右(一)の競売手続きによって、前記更生担保債権者・株式会社兵庫銀行が、必ずしも十分な優先弁済が得られるものとは考え難い上、右競売の実行により、その他の多くの後順位の更生担保債権者(これらも多くは正規の社会的金融機関である)が、優先担保債権を失うことは、明らかな事実であり、右競売の進展により本件会社更生が駄目になれば、その他の一般債権者が何らかの弁済を受け得る可能性を失うことも、これ亦明らかな事実である。他方、前記各不動産は、今急いで換価処分しなくても、現在の神戸隣接地区の不動産需給逼迫の社会的現状からすれば、将来において、更に高価に換価してその債権が十分に優先的に報われる可能性も認められるので、この際は、取り敢えず、各競売手続きの停止決定を戴くことが、本件会社更生手続き開始の必須要件であると考えられる。

また常に陰で暴力団関係者の暗躍があり、右の多数の競売物件の中の一つのみを競落して、これを口実に暴力団が乗り込み、工場敷地全体を占拠する危険性も大きく、本件のような多数筆に分かれた競売では、特にその危険性が大きいことを御賢察戴きたい。現に脅迫的言辞を弄しての種々の妨害行為が発生している。

第五 更生計画に対する意見

一 申立人らの意見

本件会社更生計画は、従前の従業員達の生存権をかけた必死の意思に基づくものであり、幸に幅広い適任な協力者も得ていて、その自力更生は十分に可能性が認められる更生計画であると確信するが、将来の債権者達の同意の可能性については、前述の通り優先権のある更生債権者及び一般の更生債権者については、概ね同意が得られる見通しであるところ、問題は更生担保債権者である金融機関の同意であるが、本件会社更生が大震災を契機に社会的必要性が大きく、且つ関西の主要労働二団体が支援している背景(銀行関係については労働組合運動として、場合により数千人の労働者の動員による陳情デモ行動も予定されている)もあり、申立人らとしては、現在の社会的責任を重視する兵庫銀行の方針からすれば、その同意も得られるものと思料する。

これらは、本来であれば、当然に被申立人会社(或いはその代理人が)が和議の申請なり会社更生手続開始の申立をすべきもので、勿論、被申立人会社の代表取締役中村吉輝個人には、社会的信用はもとより、その適格も能力も皆無とは断定し得るが、その他の取締役や代理人弁護士らは、口を揃えて従前の黒字経営を説明しており、今回の倒産の原因を作った中村吉輝個人さえ排除すれば、被申立人会社の会社更生は十分に可能であり、またそれが被申立人会社の社会的責任を全うする筋道で、今日まで放置してその努力をしないことの方が疑問である。

にも拘らず、中村吉輝個人の恣意的欲望のみに同調して、専ら暴力団関係者らとの裏工作により、目先の企業売却(それも裏金取得を企てて)しか考えず、多くの善良な債権者や従業員労働者の日干しを待って、その法的・社会的責任を放棄して来た被申立人会社の今日までの態度は、今後法的に厳しく糾弾されなければならない。

本件被申立人会社のような、設備も機械も優秀で、社会的にも本来は優良な会社を、この大震災の復興の機会に、今こそ生かして、働かせて、たとえ長年月をかけても債務を完済させることが、関係者一同の社会的責務と知るべきである。

二 更生の能否に対する見通し

現状における、申立人らの自主生産・事業再開計画は、疎第二二号証の「大景生コン工場調査並びに収支計画」書に記載の通りである。(尚、この調査・計画は今回の阪神大震災の発生前に為されたものであり、その後の被災地復興計画に対する飛躍的な建築基礎資材の需要と、これに対する供給施設・工場の客観的不足という事態を踏まえ、原料仕入れ先、販売先とも不安がなく、むしろ現在では立地条件に恵まれている三木工場の稼働も検討中である)

特に考慮されるべきことは、事業再開と言っても無償で再開出来るものではなく、この一年余りの休業により、更生会社工場の機械の保全、補修のための日時と費用が要る上、差し当たりの事業運営のためにも先立つ運営資金も必要であり、これらを本件申立人らのみでは十分に支便し得ないことから、申立人らは、系列上部労働組合からの相当額の支援を受けており、更に本件では、連合系労働組合と連帯系労働組合とが一致協力して申立人らを支援しており、更に労働金庫や政治団体の支援も得ていて、これらが協力して本件申立人らによる被申立人会社の会社更生の支援をしているもので、事業再開さえ進展すれば、いかなる需要にも応じられるだけの、技術力・労働力の背後の支援には全く不安が無く、こうした背景にも、是非とも裁判所の御賢察を賜りたいところである。

申立人らは、倒産騒ぎの混乱の中、労働組合の自力救済の過激意見も出る中、正当な法的手続きを踏んで、資料集めに奔走し、自費支便で再開への準備作業を進めて、長期間をかけて検討された見通しで、本件会社更生手続きを進めようとしているもので、折しも大震災の復興時期と遭遇し、益々、本件会社更生の成功を確信しているものである。

別紙申立人及び債権額一覧表〈省略〉

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